Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
だいぼさつとうげ
大菩薩峠11
中里 介山
Read 大菩薩峠11 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 368,567 characters · 720 screens
ですから多分、充分の用意をして持参して来たものであり、同時に、兵馬のように、ほとんど偶然に近く誘引されて来たというのでなく、たしかに痕跡をつきとめて、後の先を制したようなつもりで、抜かりなくこの座敷を、あるじの不在中に占領した得意面が、明らかに見得るのであります。
ところで二人が、酒を飲み、鶏肉を食いながら、どんな話をしているかと聞くと、
「どうも、ありゃ見たような女だよ」
と丸山勇仙が言いました。やはり話題は女のことでありました。
「左様さ、たしか拙者といえども見たことの覚えのないとはいえない代物だ」
と仏頂寺弥助が合わせます。ここで話頭に上すまでもない、女のことゆえに、兵馬をしてよけいな焦躁をさせている二人。その事とはまた別に、話題が女のことになるのは、あれよりは近く、ここへ来る途中でか、或いはモット近く、問題になるべき女の印象が現われたものと見なければならぬ。
「この宿の娘とは見えない、女中ではなおさらない――だから、ここに逗留する客の一人と見なければなるまい。珍しく、こんな奥山に冬籠りをするらしい客がかなり多いようだが、そのなかで女といってはあれ一人らしい」