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だいぼさつとうげ

大菩薩峠16

中里 介山

Read 大菩薩峠16 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 268,946 characters · 520 screens

Aozora Bunko

「ですけれども、なかなか親切で、大腹中で、そうして物わかりがよくて、どこといって……」

「それだそれだ、お気に入りさえすりゃあ、どこまでもよくしてくれるし、悪い段になると、人を取殺さずにゃ置かねえ。で、みんな腫物のように、おっかながっているが、おいらなんぞは、ちっとも怖いと思わねえ」

「え、え、米友さんは、あのお嬢様のお気に入りのようですね、米友さんに限って、あのお嬢様の前でポンポン言っても、ちっとも気におかけなさらないようですけれど、ほかの者はみんなピリピリしているようです」

「なにも、おいらは気に入られようと思って、おべッかを使ってるわけじゃねえんだが、みんなお嬢様、お嬢様って鬼か蛇ででもあるように、おっかなびっくりしているのが、おかしくってたまらねえや――」

と、米友が得意になって、少しくせせら笑いの気持です。その時、お雪ちゃんが胆吹山の方を向いて、

「友さん、あそこへおいでのは、あれは、お嬢様じゃありませんか」

お雪ちゃんが指したところの林の透間を米友が見ると、

「あっ!」

と舌を捲きました。

「こっちへおいでなさるようですね」

「うん」

「わたしは、お目にかからない方がいいでしょう、さよなら、米友さん」