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だいぼさつとうげ
大菩薩峠3
中里 介山
Read 大菩薩峠3 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 214,131 characters · 423 screens
夢に見た兵馬は嬉しい人であったが、やっぱり物足りない人でありました。
翌朝起きて見ると、昨夜書いて机の上に載せて置いた自分の手紙の上に、それとは全く別の人の書いた一封の手紙が載せてあります。
「誰が置いて行ったのでしょう」
お松はその手紙を取り上げて見ると、七兵衛の手蹟でありました。
封を切って読むと、
「兵馬様の身の上に変事が出来たから急に相談したい、少しばかり暇を願って、越後屋まで来るように」
とのことであります。
お松は胸が潰れる思いがして、すぐさま朋輩に頼んで少しばかりの暇をこしらえて、越後屋の奥座敷へ訪ねてみますと、七兵衛が待っていました。
「突然にああ言ってやったから驚いたろう。困ったことが出来たというのは、兵馬さんが縛られて、甲府の牢へ入れられてしまったことだ」
「ええ、あの方が縛られて牢へ? それはいったい、どうしたわけでございます」
「そのわけにはなかなか入り組んだ仔細があるのだが、人違いなのだ、人違いで捉まって、甲府の牢へ入れられている。運は悪く、悪いところへ通りかかったのが兵馬さんの因果、身の明りの立つまでは、ああして甲府の牢内に窮命しておいでなさらなくてはならねえ」