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だいぼさつとうげ

大菩薩峠6

中里 介山

Read 大菩薩峠6 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 185,112 characters · 362 screens

Aozora Bunko

「制多伽さん、このお隣には人がいるのよ」

金伽羅童子は、尺八を膝に置いて返事をしました。

「え、人がいるの、お隣に?」

「ええ、病気なんでしょうよ、はじめのうちは大へん苦しがっていたんですけれど、そのうちに癒って寝てしまったようですから、それで、わたしは笛を吹き出しました。あんまり吹いたり、歌ったりして、せっかく寝た人を起すと悪いね」

「そう、でも、病気が癒って寝てしまったんなら、いいでしょう、すががきをもう一つおやりよ、わたしは歌わないで、だまって聞いているから」

「そうしましょうか」

やがて、また、しめやかな尺八の音が起りました。

「ウーホフ、ホウエヤ……」

こんどはすががきを始めました。淀みもなく三べん吹き返したすががきは、子供の歌口とは思われないほどに艶のあるものです。

「うまいね、金伽羅さん」

制多伽は、その短笛の音色に心から感心して賞めると、賞められた金伽羅は無邪気に嬉しがって、

「あんまり賞めないで頂戴、笛がいいんだよ、笛のせいで、よく吹けるんだね」

「金伽羅さん、こんどはおかざきをおやりよ、ね、おかざきをやって下さいな」

「やりましょうかね。では、おかざきをやるから制多伽さん、お前、おうたいなさいな」