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だいぼさつとうげ
大菩薩峠6
中里 介山
Read 大菩薩峠6 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 185,112 characters · 362 screens
そうして時々思い出しては歯噛みをして、
「あいつ、お喋り坊主はどこへ失せおったかなあ」
取捉まえて八つ裂きにしてやりたいほどの口惜しがり方です。弁信の方にこそ怨みはあれ、神尾のこのていたらくは言わば自業自得に過ぎないのに、その逆さ怨みが、因縁ずくと思われるほどに骨身に食い入っていて、明暮、弁信を憎み憤っていたが、さてその後、弁信は再び彼の土蔵へは帰って来ませんでした。弁信が帰らないのみならず、それと一緒に出た竜之助も、あれからまた再び戻っては来ません。お銀様は、土蔵の中に引籠って、針で血を刺してはお経を写すことを、以前のように繰返しているらしい。
或る夜、神尾主膳は囈言のように、枕許にいた福村を呼んでこう言いました、
「福村、このごろ、毎夜のように、この屋敷へ狸が入り込むな」
「狸? そんなことはござるまい」
「夜中に眼が醒めると、狸の足音がする、耳を澄まして聞いていると、離れの方へ忍んで行くようだ、おれは、二晩までその足音を聞いた、この調子だと今夜あたりもやって来るぜ、取捉まえてやろうと思うが、足音だけが聞えて、身体が利かぬ」
「それは穏かでない、いったい、狸の足音というのを、どうして大将は聞き分けた、狸なら狸のように、もし人間であったら人間のように、ずいぶん打捨っちゃおけねえ」