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だいぼさつとうげ
大菩薩峠6
中里 介山
Read 大菩薩峠6 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 185,112 characters · 362 screens
頭から掻巻を被ったお銀様が、内から戸を押開いて、脱兎の勢いで、その燃えさかる火の中へ飛び出したのはこの時であります。
「熱、熱、熱」
お銀様は火を踏んで、掻巻もろともにその中を転がり出しました。
「熱、熱、熱」
同じように叫んで火の外に転がったのは、神尾主膳であります。
「熱、熱、熱、出たな坊主、熱」
お銀様も転がる、主膳も転がって起き上れない。勢いのようやく加わった火は炎々と燃え上ります。
頭から掻巻を被ったお銀様が、俵を転がしたように火の中を転がり出ると、それに驚いた神尾主膳が、同じように槍を持ったまま転がりました。
「出たな坊主」
それでも神尾の転がったのは、それと見定めてから転がったものらしく、転がっても槍は手放さないで、二三度もがいてから起き直った時に、その槍をとりのべて、眼前に転がり出した掻巻の俵を伸突きに突きました。
ところが慌てているから、槍の石突で突いてしまっているから、また槍を取り直す時にお銀様は、ようやく掻巻の中から脱け出すと、その鼻先に神尾の槍の穂の稲妻です。危うくその槍の穂先を避けましたけれども、神尾の足許も手先も狂いきって、繰りのべる槍も、手許へ引く槍も、すこぶる怪しいものとは言いながら、たしかにめざすものを見かけて突く槍です。