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だいぼさつとうげ

大菩薩峠6

中里 介山

Read 大菩薩峠6 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 185,112 characters · 362 screens

Aozora Bunko

思召しになっては違いますよ、どなたが幾人おいでになろうとも、それを怖がって、ものになるものをみすみすそのままで置いては、がんりきの沽券にかかわります。正直のところ、覘いをつけてみたことも無いではございませんが、怖いですよ、このがんりきほどの男が慄え上ってしまいました」

「意気地のない奴だな」

「全く意気地がございません」

「何がそれほど怖いのだ」

「は、は、は、がんりきの目には、あなた方は怖くはございません、江戸の町奉行や市中の金持は、あなた方を怖がって慄え上るかも知れませんが、私共はそれほど怖いとは思いませんよ。ただ、怖いのはあの犬です、あの黒犬だけには、がんりきも怖毛をふるいますよ、あの犬がついている以上は、ものになるべきものもものになりません」

がんりきがここで怖ろしがる犬というのは、ムク犬のことです。ムク犬に護られているから、お君というものに、いかなる意味においても一指を加えることのできないのを、南条の前でこぼしているのは、この男相当の愚痴であります。

南条は充分の揶揄気分を以て、

「がんりき」

「はい」

「貴様、それほどに男自慢なら、左様に怖い思いをせず、もっと面白い獲物があるのだが、相談に乗ってみる気はないか」