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だいぼさつとうげ

大菩薩峠6

中里 介山

Read 大菩薩峠6 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 185,112 characters · 362 screens

Aozora Bunko

「それで、もうこんなに山道をお歩きになって毒ではございませんか、お疲れにはなりませんか」

「一向、疲れはせぬが、久しぶりでそなたに会ったこと故に、あの松原で暫く休息して、ゆっくり物語をしたいものじゃ」

「それもよろしうございますが、蛇滝のお堂とやらまでお伴を致しましょうか」

「参籠堂へは、やっぱり女人は近づかぬがよい、行って見たところで何の風情もない、それよりか、あの松原の月の光の洩れるところが休みごろ、話しごろと思われる」

「では、あれへお伴を致しましょう」

「後へ少し戻ってもらいたい」

「どうぞ、あなた様からお先へ」

高尾と小仏の中のすすき尾花の高原の中に立った二人は、たがいにその細い道を譲りました。けれども二人の中に、距離のへだたりがあることが変りません。

一方は、火の消えた提灯を持って、懐しさに息をはずませておりながら、その人に近寄ろうとはせず、一方も、わざわざ迎えに来たと言いながら、むしろ、人には背を見せて月に心を寄せるように、すすき尾花の中に立っていました。

「細い道だから、遠慮をしていては際限がない、一足お先に」

こう言いながら、お徳の前を通り抜けた竜之助の白衣が透きとおりました。