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だいぼさつとうげ
大菩薩峠6
中里 介山
Read 大菩薩峠6 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 185,112 characters · 362 screens
、今日に限って、あの子を人に取られてしまうような気がしてならない。柳橋の殿様へもお伺いしなければならないんだが、それよりもあの子の方が気にかかる。といって、あの子が帰ってからお伺いしたんじゃ、殿様に恐れ多いし……いやになっちまうね。稲ちゃん、稲ちゃん、そこにおいでなら、ちょっと来ておくれ」
「はい」
幕帳りで仕切った楽屋の後ろから、かなり美人の部に属する女軽業の娘が面を出すと、
「あのね、茂太郎を呼んで下すったという今日のお客様は、どんな人だったか、お前知ってるでしょうね」
「あの、桟敷においでなさる時に、ちらりとお見かけ申しましたが、切髪でいらっしゃるけれども、なかなか品のよい、美しいお方でございました」
「お前、御苦労だが、若い衆をつれて、ちょっと迎えに行って来てくれないか、わたしはこれから外へ出かけるんだが、あの子が帰っていないと心配になるんだから、お客様の御機嫌を損ねないようにお話をして、早く帰していただくようにね」
「畏まりました」
「近いところだけれど、このごろは物騒だから気をつけてね」
お角は、わざわざ茂太郎を迎えにやっておいても、まだ何か心配が残っているらしく、柳橋へ行こう行こうと言い言い、まだ煙草を吹かしながら、