Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
あまくさのはる
天草の春
長谷 健
Read 天草の春 (あまくさのはる) by 長谷 健 (はせけん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 7,293 characters · 15 screens
葉桜と巨松の間をぬけ、うららかな春光を浴びて、丘陵を少しのぼると、海藻などを乾している漁師らしい家並がつづき、その向こう砂丘の上に、砲台とも覚しい巨大な石碑がある。頼山陽の泊天草洋の詩碑である。
雲耶山耶呉耶越 水天髣髴青一髪
万里泊舟天草洋 煙横蓬窓日漸没
瞥見大魚波間跳 太白当船明似月
折角の詩碑が、かつて幅を利かせた忠魂碑かなんぞのように、厳然とでも形容したい石垣の上に、見上げるばかりの構想のものだが、詩人山陽が若し生きていたら、恐らく苦笑するであろう。私がそのような感想をもらすと、同行の記者も同感の旨をつげるのであつた。古今を問わず、詩人の感覚は、威風あたりを払うといつたような、世俗のものではないはずである。堂々というようなものではなく、風雅なものであるはずである。
今朝来、内海は風ないで、いかにも春の海らしい静けさであつたが、ここから見はるかす天草灘は、怒濤逆まくというほどではなくとも、波のうねりも荒く、内海が雌ならば、外海は雄らしい様相であつた。
千人塚は、町はずれの一角にある。俗に首塚ともいうそうだが、側なる百姓に聞くと、凡そ次のように説明してくれた。