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めおとのあさ
夫婦の朝
山本 周五郎
Read 夫婦の朝 (めおとのあさ) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 11,008 characters · 22 screens
「ふん、そんな御託は家へ帰ってからにしろ、此方は酔醒めが来そうだ、行くぜ」
「待て待て、約束の品をどうする」
「おや、おめえ本当にこの手紙を取返せる積りでやって来たのか。冗談じゃあねえ、是せえあれあ金の蔓、まだまだ当分のあいだは役に立つ品だ。これっぱかりの端金でおいそれと渡せるものか、面を洗って出直して来い」
言葉も態度もがらりと破落戸の性根を出した。……三右衛門は然し静かに笑って、
「そうか、では仕方がない」
と羽折の紐を解きざま、
「沼部、貴公の性根は見届けた、生かしておけばいずれ故主の名を汚すだろう、成敗するぞ」
「やるか!」
と叫んで身を退こうとした。
然しそれより疾く、三右衛門が踏込んだと見ると、提灯の光を截って大剣が伸び、新五郎は右へ躰を捻りながら、まるで躓きでもしたように、がくんと其処へ膝を突いた。
見ていた二人はあっと、悲鳴のような叫びをあげて逃げようとする。
「待て待て、逃げるな」
三右衛門は烈しく呼止めた。
「貴様たちまで斬ろうとは云わぬ、早く医者を呼んで手当をしてやるがよい、片足は無くなろうが命には別状ない筈だ」
「……へえ」
「暫く何処かへ隠れていて、傷が治ったら江戸を立退け、拙者はこれから五十金盗難に遭ったと届出る、まごまごしていると繩にかかるぞ」