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かのうせいのぶんがく
夫婦善哉
織田 作之助
Read 夫婦善哉 (かのうせいのぶんがく) by 織田 作之助 (おださくのすけ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 47,834 characters · 94 screens
無論、妾も置いた。おれの知っている限りでは、十七歳と三十二歳の二人、後者はお千鶴の従妹だった。
もとよりその頃は既に身うけされて、朝鮮の花街から呼び戻され、川那子家の御寮人で収まっていたお千鶴は、
「――ほかのことなら辛抱できまっけど、囲うにこと欠いて、なにもわての従妹を……」
と、まるで、それがおれのせいかのように、おれに食って掛った。随分迷惑な話だったから、
「――まあ、そう怒りなさんな。怒る方が損だよ。あんたも川那子がどんな男か知ってる筈だ。これが、普通の男なら、おれもあの女だけはよせと忠告するところだが、相手が川那子だから、言っても無駄だと思って黙っていたんだよ」
とかなり手きびしく皮肉ってやったが、お千鶴は亭主のお前によりも、従妹にかんかんになっていたので、おれの言うことなど耳にはいらず、それから二三日経つと、従妹のところへ、血相かえて怒鳴りこみに行った。
口あらそいは勿論、相当はげしくつかみ合った証拠には、今その帰りだといって、おれの家へ自動車で乗りつけた時は、袖がひき千切れ、髪の毛は浅ましくばらばらだった。眇眼の眼もヒステリックに釣り上がって、唇には血がにじんでいた。