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うしのうたちょうめんをきおくりょくでかきもどしたひと
失うた帳面を記憶力で書き復した人
南方 熊楠
Read 失うた帳面を記憶力で書き復した人 (うしのうたちょうめんをきおくりょくでかきもどしたひと) by 南方 熊楠 (みなかたくまぐす) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 2,901 characters · 6 screens
はかつ感じかつ歓びけり、云云」(嘉永三年、中村定保輯『松亭漫筆』二)。
「林道春、(中略)二十五歳の時、江戸に下り、日本橋辺に旅宿せられけるに、本町の呉服屋家城八十郎という者、道春を招き、よりより性理の旨を尋ねければ、道春常に心やすく彼が家に出入りせらる。折から夏のことなるに、道春、家城が家に居ながら、しきりに眠りを催しければ、側にありたる大福帳を引きよせ、枕にして、宰予が楽しみに周公をや夢みられしと思わる。ややあって目をさまし、暮れがたき日を憾みながら、かの帳を披き、端から奥まで一通り繰り返してもとのごとくに収め、暇乞して帰られける。その年の冬不慮に出火ありて、かの家城も類火にあい、難儀の中の小屋掛けへ、道春見舞に来たられ、(中略)まずはおのおの怪我もせず立ち退かるること珍重なり、して財宝は残りしか。八十郎申すよう、家財をやくこと少しも苦には存ぜねど、苦々しきことには、大切なる懸け帳を焼き失い候て、大分の金銀を捨て申したること残念に候という。道春聞いて、その帳とはいかなる物ぞ。家城答えて(中略)当夏私店へ御出での時、取り敢えず枕にして昼寝をなされた大福帳のことで厶ります、(中略)もはやかの帳を失い申す上は、病目に茶を塗ったごとく、座頭の杖に離れしように、便りなく覚え、これからは身代潰し申すより外なく候と