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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Read 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 11,545 characters · 23 screens
「?」
ひるむ二人を当分に見やり乍ら、山ノ井金之助は続けました。
「貴公達の争っている肝心のお綾殿はな、今日嫁入先がきまったぞ」
「えッ」
「玉の輿に乗ることになったぞ。それも相手は五十石や百石の痩御家人では無い」
山ノ井金之助の言葉は、まことに、霹靂の如く二人の耳に響きました。構えた刃はダラリと垂れて、意気地が無くも、揃ってポカリと口さえ開いているのです。
「誰だ、相手は?」
秋月九十郎は僅かに気を取直しました。次第によっては、此儘切込んで行く気になるかも知れません。
「驚くなよ、お綾殿の嫁入先というのは、駒込に小大名ほどのお屋敷を構えて居る、八千五百石の大身、大森摂津守様だ」
「あッ」
二人はまさに、開いた口も塞がらなかったのです。大森摂津守は名だたる大旗本で、幾度か幕府の大官重役に擬せられましたが、その代り今年取って六十二歳、伊奈長次郎の娘お綾とは四十三も年が違って居る筈です。
「その縁談は、この山ノ井金之助も相談を受けたが、あまりの年の違いで、一度は断った。併し、貴公達も知っての通り、伊奈長次郎殿は役向の不首尾で、近くは罷免になるかも知れず、かてて加えての御勝手向不如意で、ことの外の難儀だ」