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きだんクラブ〔せんごばん〕
奇談クラブ〔戦後版〕
野村 胡堂
Read 奇談クラブ〔戦後版〕 (きだんクラブ〔せんごばん〕) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 10,841 characters · 22 screens
その時大膳正は三十五歳、まさに脂の乗り切った暴君振です。さすがに照れ臭いと思ったか、脇息を引寄せて左斜のポーズになると、右手には軽く扇を取って、それをいとも無心な態度でまさぐります。
「第一番は御城下町の豆腐屋喜兵衛の娘、糸と申します」
三文字紋弥の声につれて、覚束ない足取で、現われた十八九の娘が一人、殿の御前へ来ると、張詰めた気も挫けたものか、ヘタヘタと坐ってヒョイとお辞儀をしました。色白の眼の細い、恐ろしくポチャポチャした娘ですが、美人というには少し縁が遠過ぎます。
「もうよい、次を」
殿様は甚だ不足らしい顔をして、邪慳に長い顔をしゃくりました。
次は何々村何野何兵衛の娘、毛与、これは少し浅黒い方ですが、中々によい目鼻立ですが、その汗臭そうな大時代の紋服姿を見ると、大膳正の頭は邪慳に動きます。
「次を」
三人目、五人目、七人目と取換え引換え首実検をしましたが、何と言っても草深い田舎から集めた美人で、一応江戸の遊里も見て来た大膳正が、これならばと札を落すように優れたのはありません。
やがて八人目、
「御城下大手前の呉服屋江島屋郷右衛門の娘菊にござります」