Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

きせつのないまち

季節のない街

山本 周五郎

Read 季節のない街 (きせつのないまち) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 201,379 characters · 394 screens

Aozora Bunko

と他のかみさんが云う、「島さんちには客もないし、いつも二人っきりだろう、それで話をするのは島さんだけで、奥さんは黙りっきりなんだって、ときたま聞えたと思うと、うるさいね、とか、少し黙ってな、とかって、どなるだけなんだって、それっきりまたしんとなっちゃうんだってよ」

こういう蔭口には際のないものだが、右にあげた二つなどは尾鰭の付かない例にはいるだろう。夏が去り、秋が去り、冬が来て十一月の下旬、――島さんの家には珍しくも客があり、酒が始まった。

それは月給日のことで、客は三人。なにがし興信所における島さんの同僚たちであった。客を同伴することは予告してあったのだろう、電燈がついてから帰った島さんは、たてつけの悪い格子をあけながら、陽気な声で叫んだ。

「おい、お客さんだよ」

しかし家の中から返辞は聞えて来なかった。

障子には燭光の弱い電燈の明りがさしているし、中で人の動くけはいもするが、はいとも、お帰りなさいとも、云う者はなかった。

客の三人は眼を見交わした。

「どうぞはいりたまえ」島さんは元気に云った、「遠慮されるような邸宅じゃあない、さあどうぞ」

三人は狭い土間へはいって、帽子をぬぎ、オーバーをぬいだ。