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いえ
家
島崎 藤村
Read 家 (いえ) by 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,411 characters · 285 screens
「お俊ちゃん達もいらっしゃいな」
お雪は娘達を呼んで、豊世と一緒に入口の庭へ下りた。町中のことで、往来の片隅に涼台を持出して、あるものは腰掛け、あるものは立って通る人々の風俗を眺めた。
「お俊ちゃんは島田に結っていらっしゃれば可いのに。好く似合いますわ」と豊世はお俊の方を見た。
「此頃もネ、お俊姉さんのは催促髷だなんて、皆なでサンザン冷かしました。ですから姉さんは結っていらっしゃらないんですよ」
こうお絹が言出したので、娘達は皆な笑った。
「絹ちゃんは感心に、田舎訛が出ないこと」と豊世は言って見た。
「郷里で稽古して来たんですもの」とお絹はすこし下を向いた。
「延ちゃんは、もうすっかり東京言葉だ」とお雪も娘達の発達に驚くという眼付をした。
群集は町を隔てて潮のように押寄せて来ている。花火の音と一緒に、狂喜する喚声が遠く近く響き渡る。正太と三吉は、河岸を一廻りして戻って来た。娘達は揃って出掛けようとした。
「ハイカラねえ」
とお延は、町を通る若い娘を叔父に指してみせて置いて、連の後を追った。
お雪は子供を見に家の内へ入ったが、やがて茶を入れて涼台のところへ持って来た。