Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
いえ
家
島崎 藤村
Read 家 (いえ) by 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 141,411 characters · 285 screens
部屋の障子の開いたところから、青桐の葉が見える。一寸三吉は廊下へ出て、町々の屋根を眺めた。
「お前が探して来た家は、二階があると言ったネ。二階も好いが、子供にはアブナイぞ。橋本の仙(正太の妹)なぞは幼少い時分に楼梯から落ちて、それであんな風に成った――夫婦は二階で寝ていて知らなかったという話だ――」
「でも、お仙さんは、房ちゃんと同じ病気をしたと云うじゃ有りませんか」
「何でも俺はそういう話を聞いた」
三吉は森彦の前へ戻って、眼に見えない二階の方を見るように、しばらく兄の顔を見た。
間もなく三吉はこの二階を下りた。旅舎を出てから、「よく森彦さんは、ああして長く独りで居られるナア」と思ってみた。電車で新宿まで乗って、それから樹木の間を歩いて行くと、諸方の屋根から夕餐の煙の登るのが見えた。三吉は家の話を持って、妻子の待っている方をさして急いだ。
家具という家具は動き始めた。寝る道具から物を食う道具まで互に重なり合って、門の前にある荷車の上に積まれた。
「種ちゃん、彼方のお家の方へ行くんですよ」
とお雪は下婢の背中に居る子供に頭巾を冠せて置いて、庭伝いに女教師の家や植木屋へ別れを告げに行った。