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ずいひつ よせばやし
寄席囃子 正岡容寄席随筆集
正岡 容
Read 寄席囃子 正岡容寄席随筆集 (ずいひつ よせばやし) by 正岡 容 (まさおかいるる) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 112,259 characters · 222 screens
森田屋へ、三千歳を預けた直はんもかくやで、いくら大べら棒の私でもたいていそれがどんな種類の「伯父さん」だかくらいはもうわかっている。にもかかわらず、一方では妙に乗りかかった舟というか、よもや引かされてというか、入った原稿料を三分しては一を彼女の落籍料の内金に堀江の留守宅へ送り、一を別れた妻子に送り、残りを自分の生活費(アルコール代を含む)に充てていた。吉本出演に際して襟垢云々と言われたのも、かくては無理がなかったかもしれない。彼女は四月の上京寸前に帰阪したが(というが、市中に囲われていたのかもしれない。堀江の茶屋では、その旦那を片眼で焦脚の山本勘助のような醜い老爺であると罵っていた。いやはや!)、その時ふと洩らした告白によると、教養なく古風な教育のみを受けてきた妓だけに、正直に私が妻子への送金を告白したため、てっきり元木へ戻ると誤解し、素早く身を隠したのに一向に私が家庭へ戻らなかったため、何が何だかわからなくなっていたものらしい。しかし、その時の私は、もう妙にチグハグな心持ちで、ハリスのところから帰ってきたお吉を迎える鶴松にもさも似ていた。でも、元々が好きな女だったので、いまだ一、二回は上京後も送金していたろうか、近松秋江の「黒髪」