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ずいひつ よせばやし
寄席囃子 正岡容寄席随筆集
正岡 容
Read 寄席囃子 正岡容寄席随筆集 (ずいひつ よせばやし) by 正岡 容 (まさおかいるる) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 112,259 characters · 222 screens
横浜でペスト劇を訪ねて失望落胆するくだりに至っては、ひそかに作者の期待していたのと寸分違わぬ馬鹿馬鹿しさがそこここに満ち溢れて、すこぶる私は満足だった。
「……私は少し今松に似ているのかもしれない」
その時地のところでこう言って志ん生は笑わせたけれど、まさしくそれはそうだろう、私が彼の過ぎ来し半生の上に自分の姿を見出しているよう彼もまた今松という私の変形のあの主人公の上に若き日の自分の姿を見出しているのにちがいない。それには原作にはない先代の志ん生が空気草履を履いたため、盲小せんから江戸っ子の面汚しだと言って絶交され、岡村柿紅氏を頼んで大真面目で詫びに行く挿話もよかった。同じく昔、新石町の立花が貞山ばかりひいきにするので、その頃の若武者小勝が、
「貞山(瓢箪)ばかりが売り物(浮き物)か、小勝(あたし)もそろそろ(この頃)売れて(浮いて)きた」
と地口る挿話もおもしろかった。さらにまた名人春錦亭柳桜が穴のあいた釈場の高座へ飛び入りで客席から出演し、世にも水際立った人情噺を一席演ったので、楽屋で聴いていて感に堪えた一前座はにわかに講釈がいやになってピシーリと張扇を折り、柳桜門下にはせ参じた。