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かんちゅうたいがくき
寒中滞岳記
野中 至
Read 寒中滞岳記 (かんちゅうたいがくき) by 野中 至 (のなかいたる) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 8,295 characters · 16 screens
の外は外出を為さずこれかえって健康を害するの恐れあればなり、(外出の難かるべきは予期せる所なりしを以て、運動に供せんため自ら室内操櫓器と名くる者を携え行きたりしが室内狭くしてしばしばこれを用ゆること能わざりし)故に僅かに狭少なるによりて下界を瞰下し、常に山頂の風力の強暴なるに似ず、日光の朗らかなるを見て、時として妻などはもし空気が目に見ゆるものならば、この烈しき風を世人に見せたし、下界の人は山頂も均しく長閑ならんと思うなるべし、彼の三保の松原に羽衣を落して飛行の術を失いし天人は、空行く雁を見て天上を羨みしに引かえ、我に飛行の術あらば、暫しなりとも下界に下りて暖かそうな日の光に浴したしなど戯むれをいいしことありたり、実に山頂は風常に強くして、殆んど寧日なかりしなり、然れども諸般の事やや整理して、幾分安堵の思いをなし、室内に閑居するに至るや、予が意気豪ならざる故といわんか、将た人情の免れざる所ならんか、今までは暇なくて絶えて心に浮ばざりし事も、夜半観測の間合などには暖炉に向いながら、旧里に預け置きたる三歳の小児が事など始めて想い起せし事もありたり。