Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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ろうじゅうのめがね

小笠原壱岐守

佐々木 味津三

Read 小笠原壱岐守 (ろうじゅうのめがね) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 57,249 characters · 115 screens

Aozora Bunko

そういう塀つづきのはずれに、うすい灯のいろをにじませた本所石原町の街があった。

あたり一帯を、官員屋敷に取り囲まれてしまった中にはさまって、せめてもこの孤塁だけは守り通そうというように、うるんだ灯のいろの残っている街だった。

その向う角の、川に向いた一軒の、

お江戸お名残り、めずらし屋

と、少し横にすねたような行灯のみえる小料理屋の門の前に止まると、新兵衛は、頤をしゃくるようにして目交ぜをし乍ら、さっさと中へ這入っていった。

狭い前庭に敷いた石に、しっとりと打ち水がしてあって、濡れた石のいろが、かえってわびしかった。

「まあ、ようこそ……」

たびたび来ているとみえて、顔なじみらしい女中がふたり、あたふたと顔を並べ乍ら下へもおかずに新兵衛を請じあげた。

しかし、新兵衛は、ほかに誰か目あてがあるらしく、あちらこちらと部屋をのぞきのぞき、川に向いた三間つづきの二階へ、どんどんとあがっていった。

その部屋のてすりにもたれて、ひらひらと髪の花簪を風に鳴らし乍ら、ぼんやりと川をみていた小柄な女が、おどろいたようにふりかえった。

「あら……」

「おお、いたのう」

探していたのはそれだったのである。