Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しょうしょうしげもとのはは
少将滋幹の母
谷崎 潤一郎
Read 少将滋幹の母 (しょうしょうしげもとのはは) by 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 83,234 characters · 160 screens
にあこがれているのであろうか。………と、尼はしずかに花の下を去って、その崖を下り始めた。そして清水のほとりに来て身をかゞめながら、手をさしのべて山吹の枝を折ろうとするのであった。
尼がそうしている間に、滋幹も亦我知らず歩みを運んでいた。彼が出来るだけ足音を忍ばせながら、そうっとうしろに近寄って行くと、尼は手折った山吹を持って立ち上り、又崖の方へ引き返そうとするところであった。いかさま、こゝへ来て見ると、その崖の上の苔の間に微かなひとすじの坂路があって、そこを登り詰めたあたりに傾きかゝった小さな門が建っているのは、多分その奥が庵室になっているのであろう。
「もし、………」
身近に人のけはいがするのに驚いた尼の、はっと此方を振り返った時に、滋幹は何かの力で背後から突かれたように尼の方へのめり出ていた。
「もし、………ひょっとしたらあなた様は、故中納言殿の母君ではいらっしゃいませんか」
と、滋幹は吃りながら云った。
「世にある時は仰っしゃる通りの者でございましたが、………あなた様は」
「わたくしは、………わたくしは、………故大納言の遺れ形身、滋幹でございます」
そして彼は、一度に堰が切れたように、