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しょうしょうしげもとのはは
少将滋幹の母
谷崎 潤一郎
Read 少将滋幹の母 (しょうしょうしげもとのはは) by 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 83,234 characters · 160 screens
て都の空を翔り、鳳闕に近づき奉ろうと思っている、此の事は既に梵天、四王、閻魔、帝釈、五道冥官、司令、司録等の許しを得ているので、誰に憚るところもないのだが、たゞ貴僧は法験がめでたくおわしますので、貴僧の法力で抑えられるのが一番恐ろしい、何卒年来の師壇の契りを思って、たといその折朝廷からお召しがあっても、お請けにならないように願いたい、自分は此のことを申上げたいと存じて、只今態々筑紫から参ったのです、と云うのであった。
そこで尊意は、おん歎きの次第は御尤もであるけれども、古えより賢人が小人のために禍を蒙った例は珍しからず、貴下御一人に限った運命ではないのであるし、凡そ世の中は無道なものなのであるから、左様にお恨みなさるのは浅ましゅう存ずる、どうかそのようなお考は思い止って戴きたい、だが、そう云っても貴下と愚僧とは年来のよしみも深いことなので、折角のお頼みとあるなら、たとい眼を抜かれてもお言葉に従って、宣旨を御請けしないことに致しましょう、但し天下は皆王土であり、愚僧も王民の一人である上は、もしお召しの宣旨が数度に及んだら、二度まではお断り申上げるけれども、三度目にはお請けしなければなりますまい、と、そう答えると、丞相の霊が忽ち顔色を変じて凄じい形相になった。