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こさかいふぼくしゅうはしがき
少年科学探偵
小酒井 不木
Read 少年科学探偵 (こさかいふぼくしゅうはしがき) by 小酒井 不木 (こざかいふぼく) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 152,885 characters · 308 screens
小田さんに別れるとき、俊夫君は、
「僕が伊豆山へ行くということを、熱海の警察へ話しておいてください」
と言いました。
二
冬とはいえ、風がなく、空は麗らかに晴れ渡って、まるで春のような暖かい日でありました。けれども、汽車の窓から見る山野の色は、さすがに荒涼たるもので、ところどころに小家のように積んである新藁の姿は、遠山の雪とともにさびしい景色の一つであります。
久しぶりの旅行なので、俊夫君は窓の方を向いて、移りゆく風景を、珍しそうに眺めておりました。
大船駅を過ぎて、相模の海が見えるあたりは、東海道線のうちでも絶勝の一つに数えられます。源実朝は、
箱根路をわが越え来れば伊豆の海や
沖の小島に浪の寄る見ゆ
という名吟を残しましたが、伊豆をとりかこむ海の風光は、相模の海にしろ駿河の海にしろ、常にえもいわれぬ美しさを呈しております。皆さんは、『太平記』の中の俊基朝臣の「東下り」の条をお読みになったことがありましょう。
「竹の下道行きなやむ足柄山の峠より、大磯小磯見下ろせば、袖にも浪はこゆるぎの、急ぐともはなけれども……」とある。大磯あたりの海岸は、紫の浪が間断なく打ちよせて、都の塵にまみれた頭脳を洗濯するに役立ちます。