Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
やまでらのかい
山寺の怪
田中 貢太郎
Read 山寺の怪 (やまでらのかい) by 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 6,147 characters · 13 screens
武士は不思議に思って一足すさった。そこには三尺あまりもありそうにおもわれる黒い鱗のぴかぴか光る胴体があった。武士の手は刀の柄に往った。蛇はおちつき払っているように動きだして、ざらざらと云う音をさしながら胴体を右の方へ脱いで往った。武士の手はまだ刀の柄にあった。と、蛇は尻尾の切れた青く生なました傷痕を見せながら姿を消してしまった。武士は気が注いたように髯を剃った痕の蒼あおとした隻頬に笑いを見せながら歩いた。
路は篠竹と樹の絡みあって谷底のようになった処をあがったりおりたりした。武士は時おり脚下に眼をやった。毒だみのような葉をした草が一面に生えていた。路の遥の下の方で、どう、どう、ど、ど、どうと云うような音が聞えて来た。渡って来た渓川の音であろうか。
篠竹と樹木の絡みが次第に濃くなって来た。武士は両手にそれを押し分け押し分けして往った。分ける後から篠竹と樹木は音もなく絡みあった。武士は篠竹と樹木の絡みが濃くなるにしたがって勇気が出た。十町ばかり往ったと思う比、天鵞絨の峰の頂上が篠竹と樹木の絡みあった前方に夕陽を浴びて見えた。そこは平地になって樹木と篠竹の茂が遠のいて一面に木の花が咲いていた。