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あずさがわのじょうりゅう
山岳紀行文集 日本アルプス
小島 烏水
Read 山岳紀行文集 日本アルプス (あずさがわのじょうりゅう) by 小島 烏水 (こじまうすい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 138,795 characters · 274 screens
水の面の経緯は、幾世の人の夢を描いては消し、消しては描いているのである。
神代ながらの俤ある大天井、常念坊、蝶ヶ岳の峰伝いに下りて来た自分は、今神河内の隅に佇んだ。
鼻の先には穂高山が削り立っている、水の平らに走る波動に対して、直角に厳い肩を聳やかしている、その胸毛の底に白い蕊を点じたのは雪である、アルプス一帯に雪の降るのは、それは早いもので、九月の末には、白くなるほどつもらぬまでも、氷の毛のようなのが石角を弾き初める、来年の七、八月まで消えない、最も北へ行くほど深くて、その雪田も大きくなるが、穂高山などは、傾斜が急なのと外気に曝されているので、雪は蓮華山ほどにはない、紫黒色の大岩が、脚下に吼える水に脚を洗わせて、ここのみは冬の雪壁動くかと見るとき、自然の活動元素は、水に集中されているようだ、水は氷雪の結象から、流通大自在の性を享け、新たなる生命を賦与せられたものの特権として盛んに奔放する。低きには森あり、林あり、野の花あり、しかして高きには雪あり、氷あり、我らの不二山は、小さい山だが、熱帯地方の二倍も高い山より偉大なるは、雪と氷に包まれている