Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
あずさがわのじょうりゅう
山岳紀行文集 日本アルプス
小島 烏水
Read 山岳紀行文集 日本アルプス (あずさがわのじょうりゅう) by 小島 烏水 (こじまうすい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 138,795 characters · 274 screens
そうして、水はこれらの石の間を潜り、上を辷って蜿ねる。細い皺が網を打ったようにひろがる。さざ波は綱の目のように、水面に織られる。その大網の尖端は、紐のように太く揺れて、アール・ヌーボー式の図案に見るような、印象の強い輪廓を作って、幾筋となく繋がっては、環を作る。やがて柔らかな大曲りをして消える。痕を残さない、濃さと淡さの碧が、谷から舞い上る霧のほむらに、ぬらりと光る。さわると、鱗でも生えていそうな水だ。いかにも足が冷たい。膝がざぶりと入った……その中に、尻まで深くなる。ここを「捩じれ窪」というそうだ。霧は、頻に、頭の上を飛ぶ。空気も、その重さに堪えないで、雨を、パラパラ落して来る。
次第に、谷が蹙って来る、水は、大石の下に渦を巻く。深いところは紫を浅いところは藍を流している。白い沫が、その上を回転して、両崖の森林を振りかえりながら、何か、禍の身に迫るのを、一刻も早く遁げたいというように、後から後から、押し合って、飛んで行く。潭石の下には、大さ針の如くなる魚が、全身、透き通るように、青く染って、ぴったりと、水底に沈んでいる。水の面には、生の動揺といった象が見えている中に、これはまた青嵐も吹かば吹け、碧瑠璃のさざれ石の間に介まって、黙んまりとした死の静粛! それでいて、眠っているのではない、どこか冴え切って