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やまびこおとめ
山彦乙女
山本 周五郎
Read 山彦乙女 (やまびこおとめ) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 126,360 characters · 251 screens
が、動くけはいがないので、こんどは注意ぶかく、そばへ寄ってみた。
それは死躰であった。こちらへ頭を向けて、仰向きに倒れ、片手を伸ばし、右手で胸を掴んでいた。片方の足が不自然にねじれ、また、頭の半分が、砕けていた。死の苦悶が、そのまま残っているような、かたちである。
それは古い死躰だった。着物はぼろぼろになり、砕けた頭からながれ出た血も、すっかり乾いていた。
「どういう人間だろう」
半之助は独り言を云った。異様な匂いがするようである。じつはなにも匂わないのだが、胸がわるくなった。それで、死躰をよけて、通りぬけようとすると、ねじれた足のところに、かなり大きな革袋が、投げだされてあり、その袋から、なにかきらきら光る物が、こぼれて、ちらばっているのをみつけた。
彼は蝋燭をそっちへ近づけてみた。
ちらばっているのは、透明なのや不透明な、三種類ばかりの、宝玉ようの石であった。そういう知識のない彼には、名称はわからないが、もっとも大きな一つは、明らかに、紫水晶であった。
彼は革袋を取ろうとして、ふと死躰の顔を見た。他人の物に触れるという、気の咎めであるが、見たとたんにぞっとした。