Japanese reading practice

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やまびこおとめ

山彦乙女

山本 周五郎

Read 山彦乙女 (やまびこおとめ) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 126,360 characters · 251 screens

Aozora Bunko

彼はくすくす笑った。

「本当は私がちょっとかまをかけたんですよ、すると正木重兵衛氏がみごとに口をすべらしましてね、たちまち感づかれてしまったというわけです、じつにわる気のない、愛すべき人だと思いました」

「そのとおりだ」半之助はわきを見て云った、「みんなわる気のない人間だよ」

「そしてみんながお互いに信頼しあっている」千之助は従兄の皮肉などそ知らぬ顔で、「私はほんのしばらく話しただけですが、すぐにわかりましたね、みなさんの固い純真な友情のつながり、といったものがです、じつに素朴で美しいと思いましたよ」

「――――」

「あれですか、みなさんはどういう関係でお知合になられたんですか、学問所ですか」

「話というのはそのことか」

「むろんそうじゃありませんが、ちょっと珍しかったし、この軽薄な、ごまかしだらけの世の中に、どうしてこんな友情が生れたか、ちょっと興味を唆られたんです」

「――空雷かな」

雷鳴の遠のいてゆく空を見やりながら、半之助は独り言のように呟いた。あれだけひどく鳴って、空もまっ暗になったのに、雨の来るようすはなく、切れめの出た雲のあいだから、しだいに青空のひろがってゆくのが見えた。