Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
さんけいにいくるひとびと
山谿に生くる人々
葉山 嘉樹
Read 山谿に生くる人々 (さんけいにいくるひとびと) by 葉山 嘉樹 (はやまよしき) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 33,699 characters · 67 screens
つまり上が暗くて、土だけが白いので、光線が下から匍い上がるのだ。
これは甚しく眼を疲れさす。そこへもって来て、気圧が変である。ベンチレーターで、換気する以外に法のない、汽船のダンブル(船艙)に似ている。
飛行機が稀に、天龍川上空を通る場合、爆音は聞くが、機影を認める事は至難である。エアーポケットが、川面や、両岸の断崖へかけて出鱈目にあるのに違いない。
鉄道線路の工事場で、火を燃すと、煙は下に流れる。
光線が下から匍い上がって、煙が上から匍い下がれば、世の中はすっかり、あべこべである。そのあべこべが、ここでは現実である。
このあべこべの現実、というものが、いきなり、ポカリと口を開いて、大山を呑み込んだのならば、大山はそれが常態であると思うであろう。
だが、それにしては、大山は過去を大風呂敷に一抔入れて、背負い込んでいた。その中味がまた、宝物を詰めてでもあるのならば、出して陳列のし栄えもあろうが、ボロと臭気と貧困と屈辱とが、詰っていたのだ。
そいつが、その大風呂敷が、真物の大風呂敷なら、追っかけられた泥棒みたいに、どこの軒先きにだって、投げ出して、身軽に逃げ出すことができる。