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ばけものばなし
岸田劉生随筆集
岸田 劉生
Read 岸田劉生随筆集 (ばけものばなし) by 岸田 劉生 (きしだりゅうせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 15,344 characters · 30 screens
ともかくも「鬼」という感じは、たしかに人間の感ずる、一種の「気」である。兇事を喜び司る、一種の気である。「鬼門」とか、「鬼気」とか、または鬼界ヶ島とか皆その感じがある。
私のみた夢に、鬼をへんに生々しくみた事がある。誰れでも、これ位リアリスチックな、生きものとしてこの鬼を見た人はあるまいと思う。
人々は、鬼といえば大いてい木で造ったような物体と考えると思うが、われわれと同じ肉体の感じを持った鬼を見た人はあるまい。私は夢ながらそういう鬼を見た、鬼とは正にその通りのものであろうというような鬼である。
その夢はこうである。丁度その時分知人の家庭に少しゴタゴタがあったのだが、夢の中もそのゴタゴタのため、その知人の家へ私と家内とで行っているのである。八畳ほどの部屋で、中央に電気がついている。夜である。皆座敷に立ったまま何か話している、私の家内の他にそこの主人とそこの妻君の四人であった。部屋の左手は襖右手は障子だがあけはなしてあって椽側があり、その外は暗い庭である。私はふと右手の椽側を見るともなしに見たところ、其処に、へんな奴が立っている。それは鬼だが、顔の皮膚が丁度皮をむいた桜海老の通りの色をしている、へんに生々しい感じである。