Japanese reading practice

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こうじょうさいぼう

工場細胞

小林 多喜二

Read 工場細胞 (こうじょうさいぼう) by 小林 多喜二 (こばやしたきじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 91,234 characters · 184 screens

Aozora Bunko

」

俺がそう云いかけると、その年寄った看守はみんな云わせず、

「あゝ、そうか、そうか、――そうだろう! 勿体ないことだ!」

と云って、それを額へもって行って頂いた。それから元通りにして、丁寧に袂にもどした。

「さ、両方手を出したり。」

看守が手錠の音をガチャ/\させて、戻ってきた。そして揃えて出した俺の両手首にそれをはめた。鉄の冷たさが、吃驚させる程ヒヤリときた。

「冷てえ!」

俺は思わず手をひッこめた。

「冷てえ?――そうか、そうか。じゃ、シャツの袖口をのばしたり。その上からにしよう。」

「有難てえ。頼む!」

「こんな恰好見たら、親がなんて云うかな。不孝もんだ!」

年を取って指先きが顫えるらしく、それにかじかんでいるので、うまく鍵穴に鍵が入らずガチャガチャとそのまわりをつッついた。向い合いながら、俺はその前こゞみになっている看守の肩を見ていた。

その日の出廷はもう一人いた。小柄な瘠せた男で、寒そうに薄い唇の色をかえていた。「第二無新」の同志らしかった。

俺は半年振りで見る「外」が楽しみでならなかった。護送自動車が刑務所の構内を出てから、編笠を脱ぎ、窓のカーテンを開けてもらった。