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こうじょうさいぼう
工場細胞
小林 多喜二
Read 工場細胞 (こうじょうさいぼう) by 小林 多喜二 (こばやしたきじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 91,234 characters · 184 screens
就業のボーが波形の屋根を巾広くひゞかせた。職長は二人位しか工場に姿を見せていない。事務所に行ってるらしかった。――皆はいつものように、ボーがなっても、直ぐ機械にかゝる気がしていなかった。
ベルトがヒタ、ヒタ………と動き出すと、声高にしゃべっていた人声が、底からグン/\と迫るように高まってくる音に溺れて行った。シャフトにベルトをかけると、突然生物になったように、機械は歯車と歯車を噛み合わせ、シリンダアーで風を切った。一定の間隔に空罐をのせたコンヴェイヤーが、映画のフイルムのように機械と機械の間を辷って行った。ブランク台で大板のブリキをトロッコから移すたびに、その反射がキラッ、キラッと、天井と壁と機械の横顔を刃物より鋭く射った。トップ・ラインの女工たちが、蓋を揃えたり、数えたりしながら何か歌っている声が、どうかした機械の轟音のひけ間に聞えた。――天井の鉄梁が機械の力に抗えて、見えない程揺れた。
――あのニュースとかッて奴は共産党の宣伝をしてるんだろ、な。
職長が両手を後にまわしながら、機械の間を歩いていた。
――さア。
きかれた職工は無愛想につッぱねた。