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つねにしぜんはかたる
常に自然は語る
小川 未明
Read 常に自然は語る (つねにしぜんはかたる) by 小川 未明 (おがわみめい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 1,901 characters · 4 screens
さらに、私は、雲に対して、驚異を感ずるのだった。いかにして、あの鏡の如き空に、生ずるかを。その始めは、一片の※(「糸+慍のつくり」、第3水準1-90-18)毛の飛ぶに似たるものが、一瞬の後に、至大な勢力となり、さらに、一瞬の後には、ついに満天を掩いつくすを珍らしとしない。小なるものが次第に成長して、大きくなるのには、理由の存するとして、敢て、不思議とは考えないが、いかにして、その始め、一点の雲を生ずるかについてである。
思え、熾烈無比の太陽は、何ものをも焼きつくさんとしているではないか。ために大地は熱し、石は焼け、瓦は火を発せんばかりとなり、そして、河水は渇れ、生命あるもの、なべてうなだれて見えるのに、一抹の微小なる雲が、しかも太陽直下の大空に生れて成長するのを、私は不思議とせずにいられないのだ。
社会について考えるものは、空の現象は、即ち、これ社会に於ける、すべてのものの象徴であるとは考えまいか? 尚それに近き例を、芸術の上に取ることも出来る。
作家は、空想する自由を有している。空想は、ちょうど雲のようなものだ。はじめは、形の定らない、影のごときものであった。