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ばくまついしんかいこだん

幕末維新懐古談

高村 光雲

Read 幕末維新懐古談 (ばくまついしんかいこだん) by 高村 光雲 (たかむらこううん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 4,952 characters · 10 screens

Aozora Bunko

「そうですねえ。半さんは、いくさの始まるってことを知ってるでしょうか」

「さればさ。あの人のことだから、どうか分らないよ。こっちが先に聞いた上は、一つ、こりゃ半さんに報告せて上げなくちゃなるまい。夜が明けたら、幸吉、お前は松を伴れて行って知らしてやってくれ、ついでに夜具蒲団のようなものでも持って来てやってくれ」

こんな話でその夜は寝に就きましたが、戦争と聞いては何んとなく気味悪く、また威勢の好いことのようにも思われて心は躍る。

夜は明け、弟弟子の松どんを伴れ、大きな風呂敷を背負い、私は師匠にいわれた通り、半次郎さんの宅へ行くべく家を出ました。

道は駒形町より森下へ出て、今の楽山堂病院の所から下谷御徒町にきれ、雁鍋の背後へ出ようというのですから、七軒町の酒井大学様の前を通り西町の立花様の屋敷――片側は旗本と御家人の屋敷が並んでいる。堀を前にした立花の屋敷の所へ差し掛かると、この辺一帯は溝渠が開いて水が深く、私と松どんとは、じゃぶじゃぶと川の中でも歩くように、探り足をしては進んで行くと、何んだか、頭の頂天の方で、シュッシュッという音がする。まるで頭の側を何かが掠って行くような音である。