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へいぼん
平凡・私は懐疑派だ
二葉亭 四迷
Read 平凡・私は懐疑派だ (へいぼん) by 二葉亭 四迷 (ふたばていしめい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 81,548 characters · 161 screens
と、折柄絶入るように啼入る狗の声に、私は我知らず勃然起上ったが、何だか一人では可怕いような気がして、
「よう、阿母さん、行って見ようよう!」
「本当に仕様がない児だねえ。」
と、口小言を言い言い、母も渋々起きて、雪洞を点けて起上ったから、私も其後に随いて、玄関――と云ってもツイ次の間だが、玄関へ出た。
母が履脱へ降りて格子戸の掛金を外し、ガラリと雨戸を繰ると、颯と夜風が吹込んで、雪洞の火がチラチラと靡く。其時小さな鞠のような物が衝と軒下を飛退いたようだったが、軈て雪洞の火先が立直って、一道の光がサッと戸外の暗黒を破り、雨水の処々に溜った地面を一筋細長く照出した所を見ると、ツイ其処に生後まだ一ヵ月も経たぬ、むくむくと肥った、赤ちゃけた狗児が、小指程の尻尾を千切れそうに掉立って、此方を瞻上げている。形体は私が寝ていて想像したよりも大きかったが、果して全身雨に濡れしょぼたれて、泥だらけになり、だらりと垂れた割合に大きい耳から雫を滴し、ぽっちりと両つの眼を青貝のように列べて光らせている。
「おやおや、まあ、可愛らしい! ……」と、母も不覚言って了った。
況や私は犬好だ。