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へいぼん
平凡・私は懐疑派だ
二葉亭 四迷
Read 平凡・私は懐疑派だ (へいぼん) by 二葉亭 四迷 (ふたばていしめい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 81,548 characters · 161 screens
蝗を取りに行かないか、という声もする。君々と呼ぶ背後で、馬鹿野郎と誰かが誰かを罵る。あ、痛たッ、何でい、わーい、という声が譟然と入違って、友達は皆道草を喰っている中を、私一人は駈脱けるようにして側視もせずに切々と帰って来る。
家の横町の角迄来て擽たいような心持になって、窃と其方角を観る。果してポチが門前へ迎えに出ている。私を看附るや、逸散に飛んで来て、飛付く、舐める。何だか「兄さん!」と言ったような気がする。若し本包に、弁当箱に、草履袋で両手が塞がっていなかったら、私は此時ポチを捉まえて何を行ったか分らないが、其が有るばかりで、如何する事も出来ない。拠どころなくほたほたしながら頭を撫でて遣るだけで不承して、又歩き出す。と、ポチも忽ち身を曲らせて、横飛にヒョイと飛んで駈出すかと思うと、立止って、私の面を看て滑稽た眼色をする。追付くと、又逃げて又其眼色をする。こうして巫山戯ながら一緒に帰る。
玄関から大きな声で、「只今!」といいながら、内へ駈込んで、卒然本包を其処へ抛り出し、慌てて弁当箱を開けて、今日のお菜の残り――と称して、実は喫べたかったのを我慢して、半分残して来た其物をポチに遣る。