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ひらがげんないとりものちょう
平賀源内捕物帳
久生 十蘭
Read 平賀源内捕物帳 (ひらがげんないとりものちょう) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 16,946 characters · 34 screens
踊屋台の一件、警固木挺の番争いから、揃い衣裳の取極め、ああでもないこうでもないと、いい齢をした旦那衆までが血眼になって騒ぎたてる。
なかんずく、屋台へはいる師匠をきめる段になると、さすがに女のことだけあってこれがたやすくはおさまらない。狼連がそれぞれ双方に附いて、ぜひとも、うちの師匠をと、神輿ではないが、揉んで揉みぬく。この件ばかりで、いざこざが起ります。
贔屓すぎての喧嘩沙汰。頭を割られたの、片目になったのという物騒なもめごとが、毎年、一とつや二つはかならずおっぱじまるが、この年の騒ぎは大きかった。何ともいえぬ凄味のある事件で、これには、江戸中が竦みあがった。が、それは、後の話。
行列の道筋にあたる武家町家では、もう十三日から家の前に桟敷をかまえ、白幕やら紫幕。毛氈を敷いて金屏風を引きまわし、檐には祭礼の提灯を掛けつらね、客を大勢招んで酒宴をしながら、夜もすがらさざめいて明けるのを待っている。
何しろ江戸一の大祭なので、当日は往来を止めて猥りに通行を許さず、傍小路には矢来を結い、辻々には、大小名が長柄や槍を出して厳重に警固する。
十四日は渡初めといって、山車、練物はみな山王の社に集まってここで夜を明かし、翌十五日の暁方からそろそろと練り出す。