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ねんじゅうぎょうじおぼえがき
年中行事覚書
柳田 国男
Read 年中行事覚書 (ねんじゅうぎょうじおぼえがき) by 柳田 国男 (やなぎたくにお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 135,005 characters · 262 screens
三角畠の蕎麦あたれ
などという囃し詞が似ており、日も同じく十月十日の晩だから、もとは一続きの風俗であった。それがその中間ではいつの間にか消えているのである。これと関西地方の亥の子の関係は説明しにくいが、ともかくもただ偶然の類似でないことは、この二つの日を比較して見てもわかる。トオカンヤという名で呼ばれている区域はあまり広くはないが、旧十月十日は日本の東半分において今でもかなり大切な日である。すなわち田の神がこの一年の任務を終って、再び山に帰って山の神となりたまう日、ということになっているのである。
信州の人たちはよく知っていると思うが、あの地方ではこの日をカガシアゲ、もしくはソメの年取りといって、ソメすなわち山田の案山子を田から迎えて来て、屋敷の片隅の静かな場所で、または内庭に臼をすえて、焼餅を供え御祭をする風習が、つい近い頃まではあった。神は眼に見ることが出来ないから、この蓑笠を着て永い間、田の番をしてくれたものを、その代表者のつもりで歓待をするのであろう。
こういう話を聴くと他の地方の人は珍しがるであろうが、この日を田の神の田から引揚げたまう日と考えて、餅を搗いて供えまた自分たちも食べるという村ならば、全国を通じて数多く、神はその餅を蛙に背負わせて、山の方へ帰って行かれると言ったり、あんまり飛ぶなよ、