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ねんじゅうぎょうじおぼえがき
年中行事覚書
柳田 国男
Read 年中行事覚書 (ねんじゅうぎょうじおぼえがき) by 柳田 国男 (やなぎたくにお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 135,005 characters · 262 screens
山を背後にした麓の里の春祭で、四月八日を定日とし、今は月送りの五月八日を用いるものが、数えきれぬほどもあるのはその名残と見てよかろう。天道花または高花などと称して、竹竿の頂に色とりどりの花を結わえて立てるなども、もちろん仏者は我が信仰によって理由を説こうとするが、私たちはこれを仏教以前からの古い仕来りと思っているのである。
それを確かめる方法としては、各地の言い伝えを多く集めて、細かに比べて見るのが尋常の順序であるが、寺方では夏花は盆のかかりまで、一夏中を通して立てておくというに反して、多くの民家では八日を過ぎれば卸して川へ流し、または乾かし貯えて雷鳴の日に焚いたり、牛が遁げた時のまじないに盥に伏せたりする。花に草鞋をくくり付けて、共に立てるなども山の神と縁があり、これを日天様に上げるという処も例は多い。東北地方の烏祭は、正月初めの山入りの日に行うのが普通だが、九州の南部に行くと、四月八日に同じような祭を営み、やはりこれをミサキ祭といっている。すなわち粢を藁苞に包んで、高い木の梢に引掛けておき、烏が来て持って行くことを念ずるのである。
この日の名称にもまたいろいろの変化がある。