Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ひかげのまち
幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選
松本 泰
Read 幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選 (ひかげのまち) by 松本 泰 (まつもとたい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 52,797 characters · 107 screens
私は喫驚して林小父さんにそれを見せますと、小父さんは顔色を変えて、母さんを救う為にたった今、家をお出になったのです」
坂口はそれを聞くと突如、手に持っていた帽子を被って戸口へ歩みかけた。
「今から直ぐ私も行ってきます。伯父に万一の事でもあると大変です」
「ああ、貴郎がいらっしゃれば、母さんも、小父さんも、どんなにお気が強いでしょう。九時といえば既う十分しか間がありません。すぐいらしって下さい」
坂口はビアトレスの言葉を後に聞流して玄関を出た。自動車は全速力でハムステッドへ向った。
坂口は暗い車の中で、何を考える余裕もなく、行先計り急いでいた。そのうち彼の乗った自動車は地下鉄道の停車場前を過ぎて、公園の入口に停った。坂口はそこでタクシーを帰して、木立の間についている小径へ入っていった。
時計は九時を十五分程過ぎている。昼間の天気とは違って、空はすっかり曇っていた。湿気を持った夜風がしっとりと公園に立罩めていた。
坂口は爪先上りの小径を上って、目指すパラメントヒルの土手へ出ようとした時、たちまち身辺に凄まじい銃声が起った。それと同時にバタバタと入交った靴音が聞えた。