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げんだん

幻談・観画談 他三篇

幸田 露伴

Read 幻談・観画談 他三篇 (げんだん) by 幸田 露伴 (こうだろはん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 80,544 characters · 161 screens

Aozora Bunko

そしてお前がお母さんに機嫌を悪くされないように。そうしたらわたしは大へん嬉しいのだから。

自分は自分の思うようにすることが出来た。少年は餌の土団子をこしらえてくれた。自分はそれを投げた。少年は自分の釣った魚の中からセイゴ二尾を取って、自分に対して言葉は少いが感謝の意は深く謝した。

二人とも土堤へ上った。少年は土堤を川上の方へ、自分は土堤の西の方へと下りる訳だ。別れの言葉が交された時には、日は既に収まって、夕風が袂凉しく吹いて来た。少年は川上へ堤上を辿って行った。暮色は漸く逼った。肩にした竿、手にした畚、筒袖の裾短かな頬冠り姿の小さな影は、長い土堤の小草の路のあなたに段※(二の字点、1-2-22)と小さくなって行く然たるその様。自分は少時立って見送っていると、彼もまたふと振返ってこちらを見た。自分を見て、ちょっと首を低くして挨拶したが、その眉目は既に分明には見えなかった。五位鷺がギャアと夕空を鳴いて過ぎた。

その翌日も翌※(二の字点、1-2-22)日も自分は同じ西袋へ出かけた。しかしどうした事かその少年に復び会うことはなかった。

西袋の釣はその歳限りでやめた。