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しょみんせいかつ
庶民生活
豊島 与志雄
Read 庶民生活 (しょみんせいかつ) by 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 10,353 characters · 21 screens
嘗て内山が、無理算段をしながらさんざん芸者遊びをしたことがあるのを、私は知っていた。
朋子はただ単に利用されてるだけで、用心しないと遂にはひどい目に逢うし、内山に真の愛情などあるものか、という説があった。――これは前説の延長であって、悪意ばかりでなく一種の嫉妬の念も交ってるものだった。
朋子は生一本な性情なだけに、なんだか夢中になってるようだが、よくよく注意して進まないと、あとで取り返しのつかないことになって、とんだ汚名を着ないとも限らない、という説があった。――これは彼女の身を案ずる親切な意見で、必ずしも内山を対象としたものではなく、正常な再婚を希望する意も含まれていた。
朋子は金に吊られていて、月々いくらかの仕送りを受け、まあ生活はこれまでよりいくらか楽だろう、という説があった。――これは無関心な常識であって、峠の茶屋のおばさんが最も強硬に反対し、また、内山が時には飲み代にも窮してることがあるのを見ても、真相に遠いものだった。酒代は貸しにしてもよいとおばさんが言うのに、殆んど借りたことがないのも、朋子の援助によるものだったらしい。
火遊びなのかまたは真剣なのか、あの二人の真意はわれわれにはよく分らない、という説があった。