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のちのなりひらぶんじ
後の業平文治
三遊亭 円朝
Read 後の業平文治 (のちのなりひらぶんじ) by 三遊亭 円朝 (さんゆうていえんちょう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 109,545 characters · 216 screens
猟「成程、喜右衞門どんが云わっしゃる通り、字イ書くが一番宜(い)いだ、さア化物、字イ書けやア」
喜「紙イ無(ね)えが、六郎どんが置いて往った筆えあるから、これで書かっせえ」
女「私は江戸の者で」
喜「まアそんな事は後(あと)で宜(い)いから早く字を書かっせえ」
女「はい」
と筆を執(と)りまして古今集の中の
我が恋は行方も知らず果(はて)もなし
逢ふを限りと思ふばかりぞ
本所業平橋際(ぎわ)某(ぼう)と書きました。
猟「それが汝(われ)が名けえ、馬鹿に長(なげ)え名だなア」
女「いゝえ、これは私が子供の時習いおぼえました古い歌でございます」
猟「やア歌きゃア、そんなら汝(われ)え唄え、己(おら)ア踊るべえ」
喜「馬鹿野郎、汝(われ)が踊るような歌とは違わア、汝(われ)イえれえ字イ書くだなア、これじゃアはア人間だんべえ、こんな字イ書くもなア己(おら)が村に無(ね)えだ、名主どんに見せべえ」
喜右衞門が其の書いた物を持参しまして、其の村の名主に見せますと、
名主「やアこりゃア能(い)い書(て)じゃア、喜右衞門、なぜ其の女を連れて来ねえか」