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きゅうこうじゅうさんじかん
急行十三時間
甲賀 三郎
Read 急行十三時間 (きゅうこうじゅうさんじかん) by 甲賀 三郎 (こうがさぶろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 11,724 characters · 24 screens
「胃に毒じゃな」先刻から眼を覚してニコニコしていた老翁が口を挟んだ。
「何に毒じゃない」そう云って彼は老翁の方を向いた。南京豆に初った私との会話は南京豆で終いになった。
汽車は闇を驀地に走っている。
車内を見渡すと大半はもうさまざまの恰好をして寝入っていた。隅の方で時折大きく団扇を遣う音がする。専務車掌がよろめきながら、荷物を並べた狭い通路を歩き憎くそうに通って行った。
午前二時だ。
私の眼は益々冴えるばかりだ。
「日本も近頃は中々奇抜な犯罪が増えたて」老翁が云った。又しても犯罪の話だ!
「さよう、西洋に負けんようになったね」
「こんな事は西洋に負けても関わんがな」
「交通機関が発達したからな、日本だけ遅れている訳に行かん。それに日本は人間が多過ぎる。之が犯罪の基なんじゃ」
「じゃ人殺しを奨励するかの」
「そうもいかんて」
「然し之は人を減らすには一挙両得じゃ」
老人の癖に乱暴な事を云うのには驚いた。私の隣の私立探偵も眼をパッチリ開いて老人の顔を見た。
「そいつは乱暴だ」頬骨の出た男が云った。「まあ生んようにするのじゃな」
「それは俺は反対じゃ。国が弱わうなるて」
「国が強うなっても、食えなくては困る」