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あやしのやかた
怪しの館 短編
国枝 史郎
Read 怪しの館 短編 (あやしのやかた) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 81,915 characters · 165 screens
だが姿はわからない。木立を縫って来るからだろう。
不意に足音が消えてしまった。
と思った時また聞こえた。
「はてな?」と呟いたのはその足音が、二手に別れたからである。
三人ずつ二手に別れたらしい。こちらの方へ三人が来、母屋の方へ三人が、築山を巡って行くようである。
「いよいよ来るか」
と旗二郎、建物の角へ背中をつけ、太刀を中段、堅固に構え、奥歯を噛みしめ呼吸をととのえ、一心に前方をすかして見た。
だんだん足音が近づいて来る。だがまだ敵の姿は見えぬ。
すると忽然、太刀打ちの音! 築山の方から聞こえて来た。
チャリーンと一合! つづいて数合! それに続いて数声の悲鳴! 向こうへ向かった敵を相手に、味方の三人が切り合ったらしい。
「ウム、やったな! どうだ勝負は? やっつけたかな? やられたかな?」
旗二郎の全身はひきしまった。「出ろ出ろ出ろ! こっちへも出ろ!」
ブルッと武者顫いをした時である。前方の繁った木立を抜き、颯と走り出た人影があった。
三人の覆面の武士である。
「来い!」
と勇躍、旗二郎、建物の角から走り出た。
「悪漢!」
と一声、胆を奪い、真っ先に進んで来た一人を、サーッと右の袈裟に掛けた。