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ハムレット
怪奇探偵小説傑作選3 久生十蘭集 ハムレット
久生 十蘭
Read 怪奇探偵小説傑作選3 久生十蘭集 ハムレット (ハムレット) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 72,034 characters · 142 screens
洞窟の中でチラッとでも安全燈の光が見えたら、馳けて来て急を告げる約束だった。
蘇鉄は、石のように硬かったが、それでも、日暮まえにとうとう伐りたおしてしまった。一同は、清水の指揮に従って、刳りやすくするために、蘇鉄の幹の上に小枝を山のように積み上げ、それに火をつけた。
もう日暮も近く、沼の上は、灰白色からぼんやりとした薄墨色にかわって来た。
突然、十間ほど後ろの洞門の方で、鋭い二発の銃声がした。ぎゃーッ、という須田の血死期の絶叫が聞こえ、ちょっと間をおいて、白いひと塊りの煙が、スーッと洞門から流れ出して来た。
いっせいに棒立ちになった。
死の追跡者が、とうとう追いついて来た。
博士は地面の上にそっと斧をおくと、蒼ざめた唇を動かして、
「やって来た!」
と、呟いた。
漁夫たちの顔の上には、さして恐怖の翳はなく、そのかわり、甘く見すぎたという苦々しい後悔の色が浮かんでいた。篁だけは、観念したような顔で蘇鉄の幹に腰をかけ、立ち上ろうともしなかった。
洞門の闇の中から、冷徹な面持をしたモローゾフ教授が現われて来た。手の中にペターセン六連発の大きな自動拳銃を握っていた。