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かいいくろひめおろし
怪異黒姫おろし
江見 水蔭
Read 怪異黒姫おろし (かいいくろひめおろし) by 江見 水蔭 (えみすいいん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 12,963 characters · 26 screens
二重物、三重物、五重物。蒔絵、梨地、螺鈿、堆朱、屈輪。精巧なのも、粗末なのも、色々なのが混じていた。皆これは滝之助が、北国街道に網を張り、旅人の腰ばかり狙いをつけ、茶店でも盗み、旅籠屋でも奪い、そうしてここへ持って来た八十六箇の、それなのであった。
「今夜こそ一大事をことごとくその方に申し伝える。それというも拙老の寿命の尽きる時が参ったからじや。いや素人には知れぬが、医道に長けし身じゃ。それが知れえでなろうか」
洞斎の語り出しは淋しかった。
「お待ちなされませ、もしや人が立聞きにでも参りはしませぬか」
滝之助は念の為め見廻りに梯子を昇って外に出ようとした。
「ハテ、夜中にこの林間の一つ家、誰が来ようぞ。来ればいかに忍んでも、土中の室には必らず響く。まァ安心して聴くが好い」
真堀洞斎は実に大阪落城者の一人で有った。しかも真田幸村の部下で、堀江錦之丞と云い、幸村の子大助と同年の若武者。但し大阪城内に召抱えられるまでは、叔父真家桂斎という医家の許に同居していたので、草根木皮の調合に一通り心得が有るところから、籠城中は主に負傷者の手当に廻っていた。
それが秀頼公初め真田幸村等の薩摩落という風説を信じて、水の手から淀川口にと落ち、備後安芸の辺りに身を忍ばせていたが、秀頼その他の確実に陣亡されたのを知るに及んで、今更追腹