Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

きょうふのくちぶえ

恐怖の口笛

海野 十三

Read 恐怖の口笛 (きょうふのくちぶえ) by 海野 十三 (うんのじゅうざ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 60,713 characters · 122 screens

Aozora Bunko

「……別れの冬木立

遺品にちょうだいな

あなたの心臓を

ええ――

あたしは吸血鬼……」

赤い苺の実というのは、実は人間の心臓のことだと歌っているのである。ああ、あたしは吸血鬼!

青年紳士はハッと吾れにかえった。賑やかな竜宮劇場の客席で聞けば、赤星ジュリアの歌うこの歌も、薔薇の花のように艶やかに響くこの歌詞ではあったけれど、ここは場所が場所だった。黄昏の微光にサラサラと笹の葉が鳴っている藪蔭である。青年はその背筋が氷のようにゾッと冷たくなるのを感じた。

と、――

その刹那の出来ごとだった。

キ、キャーッ。

突如、絹を裂くような悲鳴一声!

「呀ッ、――」

それを聞くと青年紳士は、その場に棒立ちになった。悲鳴の起った場所は、いままで口笛のしていたところと同じ方向だった。大変なことが起ったらしい。青年紳士の顔色は真青になった。

彼は突然身を躍らせると、柵を越えて笹藪の中に飛びこんだ。ガサガサと藪をかきわけてゆく彼の姿が見られたが、暫くするとそのまま引返して来た。そしてまた小径に出て、こんどはドンドン駈けだした。どうやら竹藪の中は行き停りだったらしい。